虫の居どころの悪さに苛々しながらドスドスと足音を立てて自分の部屋の前に着くと、

「あ?」

扉の横の壁に大きな体で寄りかかって居眠りする翔真がいた。
「何やってんだぁ・・?」
呆れるも未茉はほっぺを突っつくと、

「起こして。」
目を閉じたまま翔真は口を動かさずそうねだった。

「なんだよ・・・起きてんじゃねーか・・・」
「起きてない。」
「起きてんだろ・・」
「キスしてくれたら目を覚まします。」
「眠り姫かお前はっ!」
「あはははっ!」
笑いをこらえられなかった翔真は思わず目を開けて笑ってしまった。

「何してんだよ。人の部屋の前で」
「帰ってくるか心配だった。」
「は?もう茨城の外周にはぜってー行かねーよ!」
「いや、そうじゃなくて・・」
「ん?」

「振られるかもしれないと思ったら、いても立ってもいられない。」

「は?」
言ってる意味がまるで理解できない未茉は、
「お前もたまに難しいこと言うよな。」
「ん?ごめん未茉ちゃんのその返しも難しいよ。」

「今、お前の元カノにストレート一発お見舞いしてきてやったよ。」

「えっ?」
てっきり匠と一緒だと思ってたので驚くと、未茉もため息つきながらしゃがんで、真顔で翔真の顔を覗き込んで顎をクイッと持ち上げた。


「お前の初めての彼女があたしだったらよかったのにな。」

「……ごめん。」
その真っ直ぐで素直な心から出た言葉に翔真は嬉しくもあって、少し胸を痛めた。

「んー。っーか、あたしわりとでけぇーと思うんだけどな。」
「え?167センチなら女の子にしては大きい方じゃない?」
「身長じゃねぇよ!!」
やはり話の流れがいまいち掴めず、突然怒鳴られて翔真はひきつるも、
「じゃ何・・?」


「愛の大きさ。」