「そこ、星河兄弟の部屋じゃないの?」

「!!」
匠の部屋から出てくると、監督達と話を済ませ通りかかったユリが厳しい目で未茉を見ている。

「ああ。話してたんだよ。」
「こんな時間に?男の部屋で?」
「悪いかよ。」
「・・敬語。」
「はい・・・。」

「翔真に言いつけちゃおっかな。」
「おう。言えば?」
そんなことはどうでもよさそうに答える未茉がまたユリにとっては面白くはなかった。

「つーか、ユリさん」
代表どうすんのかと話を切り出そうとした時、
「明日朝イチで帰る。」
「……なんで!?」
まさかの返しに未茉は焦った。

「なんでって…自分が相応しくないってみんなの前で恥かかせたんじゃん。」
「そこは普通、悔しがってリベンジするとこだろっ!!?」
「……」
ガシッ!!とユリの両肩を未茉は掴んで引き留めるかのようにキレると、

「あはははっ。何それ。」
「あ?何笑って」
「・・敬語。」
「はい・・・。」


「バスケ続けるか考える。そのために一回バスケから離れるよ。」
その揺るがない決意に押さえていた両肩を未茉はするっと離し、

「…へぇそうか。根性なしが。」
強く厳しい口調で睨み飛ばした未茉はユリを見上げた。

「わりぃけど、あやまんねーよ。お前をバスケから離れようと追いうちをかけたのが、あたしだとしてもな。」
「結構よ。」

「結局最後は自分の力でしか勝ち上がれねーからな。ユリさん。」

その彼女から滲みだす強さと眩さに思わずハッとしたユリは視線を落とし、
「自分の力なんて、満たされてる時に湧くものじゃない?」
自分でも分かっているような捨て台詞を吐いてしまっていた。