健はそっと未茉の頬に手をあてながら、互いを映す揺れる瞳の中、わずか数センチの距離で見つめてくる。
意地悪なことを言い放ちながらも真っ直ぐな目で…
「いつまでも甘えられる兄貴が兄貴でいるとは限らねーぜ?」
「う・・・」
「甘えて頼ってくんのはいーけど、お前にコクってる以上いつ俺が俺の気分で発情すっかわかんねーから。」
「え・・・もしや今これ・・」
「おー、よく気づいたな。発情中だぜ?覚悟しな。」
ニッと笑いながら迫ってくる健に
「ちょっ・・・!!たたたたんまっ!!」
ぐぐっ・・と力一杯その覆い被さってくる胸を押しながらなんとか阻止しようとすると、
「分かったよ。」
健がそう諦めたようにため息つき、未茉がほっとしたのも束の間、
「お前がギブッったらやめる。」
「じゃギブ!!」
「はぇーだろ・・・何もしてねーし。」
「っーか!!何すんだよっ!!」
「なんだろうな?楽しみにしてろ」
もはやからかってるのかマジなのか分からないその楽しんでるとしか思えないニヤニヤとした顔を睨むと
「ま。一つ言えんのは、」
「?」
「今日はキスだけじゃすませねーってこと。」
健が未茉の手首を掴んでベッドへと置き、ゆっくりと顔を近づけられるとフイッと顔を反らす。
「あたしは翔真と」
「知ってるよ。湊が好きっていいながら俺には結局逆らえないお前のこと。」
「……!!」
(た・・・確かに……そうだ。)
なんでーー?と思った瞬間、背けていた顔をクイッと真っ直ぐに未茉を見つめてくる健の瞳の中へと視線を戻された。



