「匠さんっ!ちょい待っといて下さい!準備整えて来ます。」
「え?準備?」
むろんなんのことだか分からず目をぱちくりする匠をよそに静香はポーチを握りしめ、さっと洗面所に入ってく。

「……静香ちゃんは未茉の親友だよね?色々聞いてるのかなって思ってさ。」

そんな彼女の状況も心境も知るよしもない匠は髪をかきあげながら洗面所にいる静香へ扉に向かって話しかけるも、
「?」
返答はなかった。

彼女は洗面所の中で急いでボディローションを塗りだくり、勝負下着とレースキャミに着替え全身にアロマパフを叩き込んでいたのだった。


“最近彼女にとっても俺が必要なのかなって思い始めました。”

翔真のあの自信ありげな顔と言葉を思いだした匠は拳を握りしめ、どうにか込み上げてくる苛立ちを抑えようとしていると、

カチャッと洗面所の扉は開き、そっと忍び足で匠の背後に回り、

「匠さん♡お待たせや♡」

キャミ一枚で胸を押し付けるように匠の背中に抱きつくと、
「え・・・」
悪寒を感じた彼がゆっくり振り返ると、マスカラをふんだんに塗りたぐった睫毛でウィンクし、真っ赤なリップを塗った唇で迫り、

「好きにしてくれたらええねんで♡」