「どっちが早く未茉を見つけられるか勝負しようか?」

「……え」
翔真も思わず足を止め、
「えっと…それはどんな勝負ですか?」
目をぱちくりさせると、健は笑い出し、
「半分冗談の半分マジだっ。ははっ。」

半分冗談で…半分マジ…??その不可解な言葉にぽわんっと羊頭の中でおっとりと考えて首を傾げてると、

「昔、子供の頃からよく未茉は行方不明になるんだよ。デパートでも遊園地とかでも、新しくいく場所とかでは絶対。」
「あー……目に浮かびます。」
「だろ?」
「……」

「親や匠も嵐もみんなで探し回るんだけど、絶対誰よりも一番早く俺が未茉を見つけんだよ。」

「…それも想像つきます。」
「だろ?」
どや顔の健が何を言いたいか翔真はもちろん理解をすると、

「今日は俺が見つけます。」

「無理だな。」
「いや、見つけます。」
「お、お前試合以外で意地はれんのか?」
「もし見つけたら、俺」
「よぉーし、行くか。」
「最後まで聞…」
「バスケと愛の強さじゃ俺にはまだ敵わねーよ。湊!」

いい逃げして健は勢いよく走り出すと、
(あの人は・・・)
少しイラッとする翔真だが、きつく瞼を閉じた。


“絶対誰よりも一番早く俺が未茉を見つけんだよ”


その言葉を思いだし「……よし。」とゆっくりと目を開けて大きく地面を蹴って走り出した。