(…感覚が戻ってきた。)

疲れを通り越すと不思議にやたらと集中力がぐんぐんと上がってきたのがユリ自身でも分かった。

数ヶ月ぶりくらい忘れてた感覚だ。


「本来のユリが戻ってきたな…」
自信がみなぎってきたその表情に神崎は何度も頷いた。

(そうだ。取り戻すべきは、その感覚なんだ。ユリ…!!
見失ってただけで、その感覚はずっとお前の中にある。)


ーードンッ!!!

空中でジャイコとぶつかり合うが、ユリのジャンプ力でラインから飛び込みボールを未茉の方へと送り、
「よし!!」
受け取ったのと同時に駆け抜け、田島へとロングパスを送る。

田島の東京ナンバーワンのスピードのあるドライブにはエリーですら追い付けない。
静香がしっかり水越をスクリーンで押さえつけて、田島がシュートを決めた!

「「おっし!!」」

練習でできた連携プレーをようやく発揮でき、ベンチは立ち上がって喜ぶ。
「ユリの頑張りの二点だよ!!」
「凄いよ!!あのジャイコの前を飛び込んでるんだから!!」
東京女子の控えベンチも称えた。

「よしディフェンスだ!!」
勢いを大事にしようと手を叩く神崎の声と頷く表情が目に入る。

「ナイス!」と未茉がユリの肩を叩き、戻っていった。
「…」
温かな振動とそんな言葉に妙な身震いをした。