「甘えてごめん。」

ベッドの上で体育座りで踞るユリは、部屋まで付き添った翔真に謝った。
「ううん。」
近くにあった椅子に腰かけてユリの方へ優しく視線を向けた。

「……本当に散々でかっこ悪い。」

膝に顔を埋め、泣き声を漏らさないように涙を溢しては肩を震わせていた。
「そんなこと誰も思ってないよ。」
そんな彼女に気付きながらも翔真は否定し、首を振った。

「未茉ちゃんの言い方キツかったけど、あくまでもユリの実力を信じてるからだよ。」
「うん。それは分かってる。ほんと。」
気持ちは伝わってきたから。と俯いたまま頷いた。

そしてしばらくの沈黙の後、膝に手を置き、一点を見つめ何かを思い返したように口を開いた。


「……神崎監督がね、」

「うん。」
「予選前に初めて桜蘭に来た時、初めて全国で東京女子でベスト4に導いた物凄い立役者が監督として来て初めて会って…」


『前園凄いなっ!!高校生でこんな飛ぶ奴もセンスある奴も初めて見た!!』


「私を見るなり、目を輝かせて驚いて凄い褒めてくれてたの。私を絶対的エースとして育てたいって熱意を持って選んでくれて嬉しかった。」

「そうだったんだ。」
「ん。翔真と別れてから何かに熱中したくて、気を紛らわすのにちょうどよかった。バスケは。」

「…」

「神崎監督はマンツーマンでみっちり指導してくれたり、時には居残りでもしごかれたけど、それもちっとも苦にならなかった。」

むしろ出来なかったことが出来るようになり弱点をどんどん克服してくれレベルをあげてくれる指導者に出会えたのはユリにとって初めてで、

「進学校だったし高校では程よくバスケやろうと思ってたけど、いつのまにかインターハイ目指し初めて、神崎監督も私を中心にしてチームを作り始めてバスケの楽しさをまた噛み締め始めてた。」