「その通りだよ……ったく。」
神崎監督も竹刀を振り回す手を止めてため息ついた。

「・・未茉、絵面的によくあらへん。元カノをイビる今カノなんて。それにユリのメンタルも壊れるで。」
もう止めとけ。と静香がコソッとそう耳打ちすると
「あ?」
その言葉に未茉はますますキレた。


「なんだよ、翔真のこともユリの中で引っ掛かってるのか?」

「ひっかかってるわけないでしょ。」
思わずユリはそれには反論するも、
「白石、その話はこんなとこですべき話じゃない。」
明らかにユリの中で小さくもひっかかってる要因のひとつであると悟っていた田島も口を挟むも、

「コートの上に余計な感情持ってくんな。それが出来ねぇなら代表おりろ。バスケ辞めろ。」

「!!」
言ってはいけない一言をあまりにもさらりと言い放った未茉に男子達からは厳しい視線が飛んだが、側にいた神崎監督も大成の田島も石井も健も否定はしなかった。


「ここは勝つか負けるかだけを争う場所だ。余計な感情持ち込むお前となんか一緒のコートには立てねぇよ。」

ユニフォームを脱ぎ、未茉はユリを睨みながらコートを出て行き、
「外周行ってくるぜ。」
真っ直ぐな視線を送る神崎監督にそうすれ違い様に告げると、
「いってらっしゃい。」
と無表情で頷かれた。

「……」

悔しさと憤りの滲む真っ赤な目をさせたユリは、ユニフォームを脱ぎコートから出て、

「……翔真、助けて」

頭では、どうしていいのかわからないユリが気づくと翔真の元へやって来て俯きながら胸に頭をつけて涙をボロボロと流した。


「助けて。」

彼女のがんじがらめだった心は、一番欲しがったものを知っていた。