「相変わらずお前は野心家だな。」


「!!」
後ろから聞こえる声に驚いて振り返ると、
「え…颯希さん!?」
そこには未茉の兄、颯希が立っていた。

「久しぶりだな。前に全国オールスターで会った以来か?」
「あ、はい。」

(好きな子のお兄さんが全国大学MVPプレーヤーってすげーよな…しかも美形男子…)
それは福岡の部員達も憧れる雲の上のような存在だった。

「はい。ってお前に敬語使われるときめぇーなっ!」
「わっやめて颯希さん!」
くしゃっくしゃと髪をいじりながらじゃれ合う。

(めちゃ仲良しだし…)
遠目で羨ましがる福岡の部員達。


「なんで颯希さんがここに?」
「婚約者の応援。」
「えっ!!?婚約!?」
「ああ、監督してんだ。あそこにいんだろ。きれーだろ?」
「あ、はい」(全然タイプじゃない。)
と思いながらも指をさされ、目を細めてみると、ジャケットに東京の刺繍が見えて、

「え、もしかして未茉のチームの監督なんですか!?」
「ああ。まあ、あんな下手くそがいたら一回戦敗退だ。」
「……」
引っ越してしまう前までは、未茉と颯希は喧嘩は多かったものの、こんな亀裂が入るほどではなかった。
何が一体原因なのかは、嵐も知らなかった。


「…未茉はもっとうまくなれるのに、アイツが邪魔してるんですよ。」

「邪魔?」