「翔真、隣いい?」

半分寝かけていた翔真の隣にユリはやってくると、
「いいよ。」
つめて窓側に寄りかかり寝ようとするまもなく、
「さっきは話聞いてくれてありがと。」
「ああ……うん。」
「あのさ」
そう言いかけた時、


「アホぉ!!!虫がわいとるやないかっ!!!」

静香がビニール袋を投げ捨て車内に響き渡る大きな声で叫んでいた。
「なんだよー!せっかく静香が喜ぶと思って持ってきたのにー」
ちぇっと唇を尖らせてすねる未茉は、軽井沢で朝の探索の時に拾った松ぼっくりやらどんぐりやらを渡すも、

「誰が喜ぶっちゅーねんっ!!うちはリスちゃうで!!!」
「リス?静香がそんな可愛い生き物のわけないじゃんっ!!!強いて言うなら熊とか?あ、それは翔真か!!」
ケラケラ笑ってると、前に座っていた田島は立ち上がり後ろを振り向き、

「うるっさいっ!!!あんた達!!!これ以上喋ったら降ろすからねっ!!!」

「「う・・・」」
キャプテン田島から雷を落とされ強制的に口を閉じることになった二人。

「あははっ。だから静香ちゃん喜ぶの?って聞いたのに」
そのやりとりを聞いていた翔真は肘つきながら後ろの座席で微笑むと、

「幸せそうな顔してるね。」

隣で見ていたユリがそんな翔真を見ながらぼんやりそう呟くと、
「え?」
「なんで私と付き合ってる時はそういう顔見せてくれなかったかなぁーって。」
「そんなことないよ。」
「辛くても手離さなきゃよかったなー。翔真のこと。」
「……」
「そしたらずっとあたしと付き合ってたよね?」

まっすぐなユリの言葉と今更な話に少し驚くも、
「いや…」
「優しいから人を傷つけらんないじゃない翔真。だから」

「他の人を好きなのにユリと付き合ってくことは出来なかったと思うよ。」

「……!!」

(あ~~~。何このバス・・・。すっげー乗り心地わりぃぞ・・)
真後ろから聞こえてくる翔真とユリのやりとりにうなされる健なのであった・・・。