未茉達が練習している体育館とは別にある千葉の総合アリーナの試合会場では、午後から男女各試合が行われる。

14時からは東京男子の京都との対戦試合で、17時からは女子の愛知県との試合が行われる。

全国各地からの応援とハイレベルな試合が見れるとあってバスケファンの人達や、記者で会場は賑わっていたが、中でも一際目立っていたのは、

「桐生くーん!!!」
「桐生さん握手してください!!!」
福岡代表の桐生嵐が試合の観戦をしてるだけなのに、沢山の人達に囲まれていた。

「すげー生桐生じゃん!!CM見たか?マジすげーな。」
「昨日NHKにも出てたろ。」
「高校生ながらに日本代表合宿にも呼ばれて活躍してんだろ?別格だぜ。」
「日本で桐生が取れないタイトルなんてねーよな。そのうちアメリカじゃねーかマジ。」

人々を虜にする日本人離れの華麗なテクニックが持ち味の桐生嵐見たさにアリーナには人が溢れていた。


「すげーな。桐生嵐見えねーな。」

試合なんてそっちのけで嵐が座るベンチには人だかりが出来ていて、東京代表男子達が到着し、アップしながら会場を見渡すがその姿は見えなく、マイクはあっけにとられてた。

「嵐!」
アリーナ下からベンチへ匠が嵐の方に控えめに軽く手を振ると、嵐もそれに気付きアリーナへと降りてくる。

「久しぶりだな。元気か?」
「元気だぜ!未茉は?」
嵐が動いただけで会場中の視線が集まる中も、慣れてるのかお構い無しだった。

「女子は夕方からだから、まだ体育館で練習してるよ。」
「ふーん。健兄から電話で聞いたぜ。やんちゃばっかしやがって。」
「それはお前もだろ。」
ははっと無邪気に笑い合う幼なじみの兄弟関係に嵐のプライベートな柔らかい表情だったが、一変した。

ある男の存在で。


「…湊翔真。」

着替えてきた翔真がアップに入ると、目付きが変わった。
鋭い視線に気付き「?」翔真も振り返り、嵐の存在に気づき挨拶をしようとするも、ふいっと無視して、嵐は会場を出ていった。