「え、嵐も来てるの?」

昨日俺のとこに電話来てさ、と隣に座る匠がそう話すと、未茉も驚いた。

「福岡はシードだから今日は試合ないけど、一日早く千葉のホテルにいて練習してるって。」
「へぇー!!そうなんだ!会えるかなっ!!」
「会えると思うよ。未茉の試合見るって言ってたから。」
「そうか!楽しみだなそれ!!なんならあたしが嵐と戦いてぇー」
「未茉が加わったら強いな。東京男子は。」
「だろ!?」

健のことで責任を感じて元気がないかと思って心配していた匠だったが、未茉の笑顔を見て安心した。

“未茉を頼むな。”
今日、健から念押しにそう頼まれて、健の分も自分のできる限りはしようと思った。

(できるなら、あんな奴(湊)よりもずっと思いつづけてる健を…)
と、マイクに説教されてる翔真を睨みながら思ってると、


「ん?道こっちやないんやないか。」

未茉の前の座席に座る静香が窓の外の景色を見ながら、高速道路は逆やで。と不信そうに周りを見渡す。

「確かに…言われて見れば」
石井もそう不思議に思って、数十分過ぎるとバスはある高校に止まった。


「え…ここ」
ざわっと車内が窓の外を見ると、乗車口の扉が開き、前園ユリが入ってきた。

「「ユリっ!!!?」」

未茉も席を立ち、みんながその存在に声をあげて驚いた。

髪もバッサリとショートヘアに切っていて、何か吹っ切れたような表情で車内に立ち、みんなに向けて深く一礼した。

その姿にシンッ…と静まり返っていた。
そして、ユリがゆっくりと顔をあげると、神崎監督の前でもう一度深くお辞儀をした。