「矢野…!」
「頑張れっ!!」
驚く前原に橘が何も言わない矢野の代わりにそう叫ぶ。
矢野達二年が橘達に促されただろうからだろうけれども、がらにもないことをしてくれるのは、ポリシーに反するだろう、と前原はその気持ちが更に嬉しく思えて、
「ありがとう」そう返事を返そうとした瞬間、
「先輩達ありがとうございまぁーーす!!!」
未茉が隣で前原の声なんてかき消すくらいの大声で返すと、矢野は面白くなさそうに睨み、橘にこそっと耳打ちすると、
「白石じゃなくて、前原だけに言ってるんだってー」
その橘の通訳にバス車内は大爆笑した。
「んっだよ!!もー!!!」
素直じゃない二年達に未茉はふて腐れるも、出発するバスの窓から、身を乗り出して
「行ってきまーーす!!!」
大きく手を振りながら満面の笑みで答えた。