医師である父が診察室に来たので、莉穂は未茉を呼びに探しに来ると、
『未茉ちゃん?』
会話は聞こえないものの、突然ぽたぽた…と頬に伝う涙を流す未茉に気づくと莉穂は驚いた。
(あの未茉が泣くなんて…しかも男で。)
『泣いてる?』
「泣いてねーし、最初っから大丈夫だからもう切るぜ。莉穂もいるし。」
『…分かった。明日ね』
「じゃ」
電話を切ると目の前の莉穂に抱きついた。
手にはハートのバルーンを持ったまま。
“あげる。俺の気持ち”
「あたしは、今すぐ翔真と付き合いたい!!翔真にキスしたいし、抱きつきたいし、ずっと一緒にいたい!!!」
「ん。」
「本当はユリなんかに渡したくねぇーよ!!だってあたしだってすげぇ好きだもん!!!」
好きだ。
スゲー好きだ。
大好きだ。
どんどん膨らんで破裂しそうになる。
「こんなよぇーかっこわりぃあたしのこと、誰にも言うなよ莉穂…」
「分かった。」
「静香には絶対に言うなよぉお…」
「分かった。分かった。」
泣きじゃくりながら、莉穂はよしよしと背中をさすってくれた。
「今日、私が送った動画見た?」
「なんか送ってくれてた?わりぃバタバタしててスマホいじれてねぇや。」
「国体が終わってからでいいから見て。」
「おう。」