未茉は和希を送りがてら、明日の国体の為に腕の調子を見て貰おうと、東条家の病院に寄っていった。

「あれっ!禅!!」

時間外診察のため、誰もいない院内の薄暗い待合室で待ってるとこちらに向かって歩いてくる禅の姿を発見する。
「姉貴(莉穂)が先輩ときてるってLINEくれて。あれ、和希は?」

「莉穂に部屋連れてって貰ってる。」
「そうですか。いよいよ明日ですね国体。」
禅は隣のソファーに腰かけた。

「おう!明日莉穂と応援に来てくれんの?」
「遠くて行けないです。」
「だよなー。」
少し空笑いした後、どこか遠くに視線を落とし、ぼんやりとする未茉の様子を横目で気づき、

「!!」
肩に手を回し、勢いよく引き寄せて唇を押し付ける。

「ぉうあっ!!!?」
唇と唇が触れあった瞬間、未茉が驚き口を開くと禅の舌が歯列をなぞるように侵入してくる。

「ばっかやろぉぉお!!!」
ーーがっしゃぁぁあんっ!!!
思わず足でソファーを蹴り飛ばし、そのまま椅子ごとひっくり返してしまうと、
「うわっ!!」
禅も床に転がり倒れてしまう。


「おっお前…っ!!きっ…キスとか急に勝手にしてんじゃねーよ!!!」
「同意しないとしちゃいけないんすか?」
「ったりめーだろ!!!あほか!!」
「ふうん…」
不意をついたキスに未茉は顔を真っ赤にして唇を押さえてうろたえる姿に、

「先輩、かわいっすね。」

ニヤッと好物そうに笑う野獣の禅。