…ザアザアッ……


警察を出た帰り道、車の窓には雨が打ち付けていた。
電波が悪いのかラジオには雑音が入り交じり、神崎の車内には、橘と、結城と翔真が乗っていた。

静まり返っていて何を話したらいいのか神崎も戸惑っていて、ハンドル握って運転するのがやっとだった。



「…白石の兄さんと結婚するのは本当ですか?」

誰もが聞きたいであろうことを口にしない沈黙の空間に耐えきれず、痺れをきらした結城が口を開いた。


「…ご両親は祝福してくださってるけれどね…」
白石達が…と言いたげな濁し方だった。

「国体監督は別に颯希さんの妹の白石がいるから引き受けたわけではないの。むしろ颯希さんは兄弟の話は私が聞いても一切話してくれないし。
ただ毛嫌いしてるとは噂では聞いていて、自分が監督受け持つメンバーに白石がいるっていうのは聞いていて、興味はあった。どんなこだろうって。」

「…」

「白石はバスケもそうだし、思ってた以上の子で個人的にも人間的にも気に入ってたわ。意思疎通のできるいい関係だとも思ってたから、私が颯希さんの婚約者だと知ってもああはならないとは自信…あったんだけど…」

あんな光景を見ると、よっぽど深い溝があることを当事者の神崎でも分かるわけで、婚約者ですらそれ以上の理由を立ち入ることすらできないとなるとよっぽどのことなんだろうと、それ以上結城は聞くことはなかった。


でも翔真だけは、他にも気になっていたことを聞いた。


「未茉ちゃんが警官を殴ったんですか?」

「ああ…、最初白石が殴ろうとしたのを星河君が止めて、星河君が警官を殴ってた。」

「「え!?健さんが!?」」
あの人が人を殴るなんて絶対ありえないことだろうと、一同は我が耳を疑った。