「颯希!!やめて!!何してるの」
まさかの手加減なしの平手打ちに神崎は思わず声をあげた。
未茉は叩かれた頬を押さえながら睨み、すぐ様殴り返そうと、右手を高く突き上げると、
「姉ちゃん!!!」
和希は思わず車椅子から立ち上がり、間に入ろうと駆け出すも、
「和希!!」
ガクッ…と足を挫かせ、転んでしまい、走って翔真が支えに入る。
「なんだ。和希、お前また怪我してんのか。」
颯希は転んだ和希を見下しながら鼻で笑い、
「練習もろくにしねえで、ゲームばっかしてるからすぐ怪我すんだよ。」
「うるせぇ!!!てめぇにとやかく言われる筋合いねぇんだよ!!!」
「…和希君…」
明るい白石家にお邪魔をしている翔真は殺気だった和希の表情も、その関係性にも驚いた。
お兄さんと何かあるだろう。とは思っていたけれど…
「こっちだって大会前に練習わざわざ抜け出して来てやったのに、その言い草はなんだ?」
「…」
「俺が引き受け人にならなければ、未茉は明日の大会にも出れねぇんだろ?」
兄弟関係なのにまるで脅迫めいたその言い草に一同は言葉を失っていた。
「未茉、土下座しろよ。」
「…あ?」
「この俺に頼み事してんだろ?土下座しねーんだったらこのまま帰るぜ。」
とても血の通ったまともな人間が言うようなセリフでもなければ、そんな鋭く冷たい視線を刺すような兄の存在に誰もが驚いた。
未茉や和希にこんな兄がいたこと。
そして大学ナンバーワンプレーヤー白石颯希がこんな冷血人間であることに。