「とにかく星河君のご両親にも来て頂いて、あと白石さんのご両親にもご連絡してください。とても落ち着いてものを話せるような子ではないのでご両親の元で一緒にお話しましょう。」
刑事は嫌みを込めて神崎にそう促すと、


「残念ながらパパもママも今中国だからすぐには来れないぜ。」
ふんっと未茉は睨みながら言う。

「中国?」
「先程白石さんのご両親にもご連絡をしたのですが、日本代表の監督で遠征で奥様も同行されてて…だから担任である私が一応身元引き受け人として来たのですが」

「それは困りましたね。どっちにしても未成年者なので、こういった事件上、ご両親の引き渡しが鉄則ですので、中国から戻ってきてもらうまで待つか…」

「もっ…戻ってきてもらうって!?そしたら明日の国体が間に合わないじゃないですか!?」
「でも仕方ないですね。それまでここで待機してもらうしか。」


「「そんなっ!!?」」

まさかの不測の事態に一同は声を揃えた。

明日の国体に欠席なんてそんな最悪な事態は避けなければならない。

こればかりは健もまさかの計算外だった。



「ちょっと待ってくれよ!!いいからさっきの男とキタローに会わせろ!!警察が話ややこしくしてるだけで、あたしは」
騒ぐ未茉の横で、神崎が苦渋の決断を口にした。


「あの、刑事さん。彼女の兄で成人してる方だったら引き渡しの対象人物になりますか?」


「…!」
その言葉にゆっくりと神崎の方を見上げた。


「成人しているご家族の方ならば。」
刑事が頷くと、神崎はスマホを取り出した。

「おい、どこにかけるつもりだ。」
未茉は睨みながら言った。
「白石、誰に口聞いてんのよ敬語…」
神崎は見たことないような未茉の表情に凍りついた。

「かけたらマジぶっ殺す」


「…」
一瞬だけ怯むものの、神崎はぺちんっと未茉の頬を軽く叩き、


「星河君の気持ち考えなさい。ご両親が来るの待ったら明日は出場停止よ。」