ーーガンっ!!!
鈍い音が響き渡った。

「たっ…健兄っ!!!?」

刑事はもろに入った左頬を押さえ勢いよく床に崩れ落ちながら、
「こっ公務執行妨害だぞ!!君こんなところでこんなことしていくら未成年だからってただですむと…」


「本当の被害者は誰だと思ってるんだよ!!?」

廊下にいる誰もが振り返るくらいの大声で健は刑事に怒鳴りつけた。


「怖い思いしたのは誰だって聞いてんだよ。」

「健に…」


「未茉に何かあったら俺がアイツをぶっ殺してやるとこだった!!!」


どんな時でもいつも冷静で、何があっても人なんか殴るような人じゃないのに、体の奥底から絞りだすような怒鳴り声と…
その自分への熱い思いに未茉は驚き、言葉を失った。



「白石!!!星河君…!!!」


そこへ新米から連絡をもらった国体監督の神崎が斎藤と一緒に駆けつけ、大騒ぎを起こしているその場へとやってきた。

「星河君、一体何やってるのよ!!!」

遠目から殴りかかっていた姿を見て神崎は驚きを隠せなかった。

「ああ、担任の先生ですか?見ての通りなんで申し訳ないんですが親御さんをお呼び下さい。別件も加わりますので長くなりますよ。」
殴られた刑事が神崎を睨みつけながら冷たくいい放つ。

「ちょっと待って下さい!星河君、あなたらしくもない一体なんで…」
「いいよ。せんせー。こんくらい停学くらいですむだろうから。」
「停学って…」

「健兄は悪くない!!!この刑事が嘘ばっかりこくからあたしが!!!あたしをかばって」
言いかける未茉の口を健は手でふさぎ、そっと引っ張り寄せ耳元で、


「お前は明日の国体のことだけを考えろ。」


「…!」

(国体…?)

「だから健兄まさかあたしを…」