「恋愛なんてね、足掻いたって無駄よ。無理強いしたって、もう別の方向を向いてたらこっちにはしばらく来ないよ。」
「…」
「私が思うに、その間に自分がどんな道を歩んでるかだと思う。」
「…」
「今の自分で振られたんなら、なんの進歩もしてない自分に魅力なんてまた感じて貰えないでしょ。」
諦めてないんだ。
…田島はマイクのことを。
だから、諦めな。って言ってこないんだ。とユリは驚いた。
友達に相談してももう諦めな、次行きなっていう言葉しか返ってこなかったユリにとってそれは説得力のあるほんのわずかな光だった。
「まだ可能性があるじゃん。」
「…」
「湊でしょ?白石に振り回されてフラれるかもしんないし、可能性あるっしょ。それよりあんたがまたバスケ楽しいって思えて、変われる可能性も高いんじゃないの?こうして逃げてもがいてるよりは。」
“逃げてんじゃねーよ!!ユリ”
同時に響いたのは未茉の言葉だった。
あの時、白石は自分が幸せになるよりも、人が幸せになることを選んだ。
私にはそれが出来ない。
翔真はそれをできる人を選んだ。
叩かれた頬の痛みは、自分には足りない、このままじゃ越えられない何かだ。
「外でやんない?少し」
拳をきつくしめ、小さくすすり泣くユリを見て田島はバッグからバスケットボールを取り出し提案した。
「…」
「ここでうずくまって泣いて過ごす数時間よりも、今バスケやって過ごす数時間の方が、よっぽど自分も未来も変えられる。」