「単刀直入に言うんだけどさ、あんた明日出てくんない?」

「は…なに言ってるんですか急に」
思いがけない誘いに戸惑うも、浅はかだと笑った。

「勝ちたいんだわ。エマに。そのためにはあんたが必要だってこと、私と白石だけは気づいてる。」

「…」
「ああ、あと神崎もかな。」

“神崎”監督のその名前にユリは体をぴくりと震わせた。

「神崎もあんたが明日くること捨ててないよ。ちゃんと登録メンバー表にあんたの名前があるってことは、退部届けも受理してないね。」

「何言ってるんですか…もう私何週間もボール触ってないんですよ。走ってもないし、試合に出れる体力だってないですよ。」


「4年間毎日ボール触って来たんだから、何週間のブランクくらい屁でもないはずよ。あんたが本物ならね。」

戒めるように睨んでそこまでいい放つ田島に、ユリは驚いた。


「そんな世話焼きキャラでしたっけ…田島さんって。」

「は?まさか。あんたの未来なんてこれっぽっちの世話をやくつもりないわ。明日の試合だけよ。エマに勝てる可能性100に近づけてるだけ。」

「…!」
「用があるのは、あんたが明日の試合にでるか出ないかだけよ。」

中学までは全国制覇を何度か味わってる人にとって高校で一度でもいいからと日本一を目指す田島にとって、未茉とユリが愛知戦の大きな鍵を握ることを分かっていた。


「無理です。本当に私は…もうコートに立てな」
「明日立てなかったら、あんたのバスケ人生はもう、終わりだね。」

甘えも、弱さも、一刀両断。田島は突っぱねた。