「翔真、ちょっと」
三上にそう呼ばれ、さっき何か話したそうにしていたことを思い出した。
使われてない教室の窓辺に翔真はもたれ掛かるように座り、三上の話を聞いた。
自分が行き過ぎたことをしてしまい、ユリを追い詰めてしまったことを申し訳なそう話した。
そして未茉の話も。
「だから前園の為に白石は身をひいただけだと思う。本当は…」
「うん。ありがと。三上」
にこっといつものようなふわっとした笑みだったが、空元気に見えた。
翔真なら、必ずそう言うだろうと思っていたから、いたたまれなかった。
「…ユリは帰ったの?」
「ああ。親と連絡がとれなかったから親戚の方が迎えに。」
責任を感じてる翔真が、重い体を起こしユリの家へ向かうのも三上は分かった。理性的にやらなきゃいけないことを分かってるからだ。
「待って俺が行くよ。俺が引き金だったし、俺に行かせて。」
「いやでも」
「翔真は、自分の行きたいとこに行けよ。」
優しさをかけてくれてる友人の言葉。
「俺の行きたいとこ…か。」
なのに、それが、
「よく分からねー…」
ため息混じりに見上げた天井に吐き出すような言葉がもがいてるようだ。
まるで行き場のない感情に、何に憤りを感じてるのか分からない。
駆け出す気持ちが、焦燥感が、何があっても彼女の元へ向かっていた気持ちがもう敗北感に変わってぴくりとも動けない。
ただただ、絶望的にも感じるこの報われない敵わない想いに、
今まで悔しい。なんてなかった。
初めて思った。
悲しいって。