「白石、大丈夫か?」

ステージ袖では、いつもと変わらない笑顔で元気いっぱいに戻ってきた未茉の後ろ姿を一目見たキタローには、
(オーラが…)
今にも泣き出しそうなオーラの未茉に心配になっていて、声をかけた。


「おう!疲れてる暇ねーよ!まだまだ…」

いいかけると、向日葵のような明るい黄色の手作りドレスをキタローは差し出した。
「おわっ!!なんだこれ!!すげードレス!」

「白石は、俺にとっては太陽みたいなイメージなんだ。キラキラしていつもお日さまのように俺を照らす…とっても暖かい。」

「あんだよ!!キタロー突然!!照れる…」
「曇り空に負けないくらい白石は眩しいくらい輝くんだ。いつも。」
「…」


「ドラマみたいにカッコよく決めるんだろ?」


「キタロー…」
「ヒロインにはぴったりのドレスだ。」
彼女の一世一代の告白の演出のお手伝いをしたくずっと徹夜をしていた。
「だからお前クマだらけだったのか…」
未茉はドレスを差し出されると、ずっとあんなに忙しい中、睡眠時間削って作ってまでこれを縫ってくれてたのかと思うと胸が熱くなった。


「力一杯、白石らしくダンク決めてこい。」



キタローのまん丸の目は、何か大切なものを訴えるようで、浮かんできたのは翔真の傷ついた目だった。


「謝ってくる!!」
受け取ってステージを降り走り去ってく未茉を見ながら神に祈りだすと、

(…なんだ…?)
ゾクッ…と背筋が凍るような悪寒をキタローは察知して、振り返るとキタローの背後である男が目に止まった。

「ぶつぶつ…」
インターハイ予選での活躍が取り上げられた雑誌を丸めながらどこかへ消えていった。