パタンッ……!
何かを閉ざすように部屋の扉を閉め寄り掛かり天井を見上げて健は深いため息をついてると、

「星河君。」

「……神崎さん!」
廊下に出るとラフなジャージ姿の神崎監督がこちらに歩いてきた。

「あ、神崎監督でしたね。すみません。」
「あなたに監督って言われる方が不思議な響きだけど、まぁここではそう呼んでよ。」
「はい。監督。」
頭を下げると神崎監督は優しく微笑んだ。

「ちょうど健君の部屋に行こうと思ってたのよ。」

長い巻き髪を揺らしながら中廊下のベンチに足を組み座った。

「夜這いですか?さすがにまずくねぇーすか?」
「えーっ??そぉっ!?まだ若いし結構イケると思うんだけどぉー」
「ははっ!!お断りっすよ。」
「ひどーい!あからさま」
「残念ながら年下好みなので。」
「知ってる。すぐ分かったわよ。」
自販機からコーヒーを二つ取り出して差し出すと神崎は笑いながら受けとる。

「白石未茉…か。」

缶コーヒーのラベルを見ながら神崎は何か物思いに浸ってると、

「いるって聞いてたけど見るとびっくりしちゃったな。」
「……」
「白石は私のこと知ってるの?」
「まさか。」
コーヒーの蓋を開けながら健は少しドライに答えた。
「……知らないか。」
「言うわけないでしょう。」



「……私が憎き兄貴、颯希の婚約者だって。」