…願ったけれど、初めて見せた彼のさっきのあの冷たく突き放したあの表情が瞼の裏に浮かんでしまい、動揺していると、
「でもよー、一発殴らせろよ。」
未茉の聞いたことないくらい低い声で静かに放った言葉にユリは驚く間もなく、
シュッーー!と平手が頬に飛んできた。
バッチーーンッ…!!
それはユリがよろめき、頬が一瞬にして赤く腫れる程の痛みだった。
「った…」
「死ぬとか言ってんなよ!!!」
「…!?」
未茉は大声で悔しそうに怒鳴った。
驚くユリは叩かれた頬を押さえる手が震えた。
「たかが一人の男のために死ぬとか言ってんなよ!!!」
思わずユリの胸ぐらを強く掴み、壁に体を打ち付けると、充血するくらいの真っ赤な目力で睨みながら怒鳴った。
「ちょっとのスランプくらいでバスケ辞めてぇとかほざきやがって。おめぇーはよえーんだよ!!」
「…!」
「もっと強くなれよ!!ユリ!!」
バッ!!と掴んでた胸ぐらを勢いよく振り捨てた。
「逃げてばっかりいねーでいい加減自分と向き合え!!」
見たこともない未茉の形相と言葉の深さにユリは放心して動けなかった。
「言っとくけどな、翔真が一番すげー好きなのは、お前じゃない!!このあたしだぜ!!」
「…分かっ…てる…」
溢れ出す涙を止めるかのように強く瞼を押さえ、突き刺さる事実に震える唇を噛み締めるユリ。
「お前、翔真のこと幸せにできんのか!?できねぇだろ!?だってアイツはあたしのこと好きだぜ!?お前みたいに死ぬほどな!!」
「…」
「そんな相手の気持ちをねじ伏せてまで自分に向かせて、互いに幸せになれるわけないだろう!?」
…はぁっと興奮交じりの怒鳴り声を未茉は落ち着け、うつ向いたまま震え動かないユリを睨み、ため息ついた。



