「違うってだから」
話がややこしくなる前に結城が割り込むと、
「翔真が白石を選ぶっていうなら私死ぬから!!!」
急にとんでもないことを口にし、叫んだ。
「死…!?」
「今の私には翔真が全てなの!!翔真しかいないの!!やだやだやだやだぁぁあ…」
未茉の腕を掴みながら悲痛な表情で泣き崩れるユリに驚く。
ざわっ…ざわ…
一時騒然となった。
心が引き裂かれるようなユリの叫びに教室内の者達も廊下へと出てきて、
「…ッ…」
涙を擦りながら翔真が出てくることを恐れたユリはその場から走り去ろうとすると、
「待てよユリ!!!」
未茉はその後を追った。
「待てよ!!ユリ!!」
足の早さなら都内でも上位を争うであろう二人だが、練習を怠らない未茉に数メートル走った所で分があった。
「離して!!!」
掴まえた腕を思いっきり振り払われるが、またすぐ未茉はユリの両手を掴み出す。
「ヨリを戻したのか?」
模擬店のない空いている静かな理科室に入ると未茉は信じ固く確認した。
誤解している彼女にユリは少し驚くも否定も肯定もしなかった。
「お前翔真がいないと生きてけねーとか凄いな。それ普通にやべーだろレベルち。」
呆れたような、すこし引きぎみの笑いを混ぜて言った。
それは、身を引くと決めたような言い回しだった。
以外とあっさり引き際のいい未茉にユリは驚いて背けてた視線を戻し、
「諦めるの…?翔真のこと…」
「諦めるもなにもユリを彼女にするってアイツが決めたんだろ?」
「…」
このまま未茉がそう思い込んでくれて彼が自分のものになってくれるなら…
そうユリは深く目を閉じて願った。



