「結城君、三上君!」

背後から駆けてくる女の声に一同は振り返ると、

「ねぇ、翔真知らない!?」

そこへなんともいえないタイミングで前園ユリがやってきたのだ。

「知りません。」
仮に知っていても教えたくない三上は分かりやすい程冷たく答えた。
「そっか。バスケ部にもいなかったからこっちかなと思ったんだけど…」

「あ、ユリちゃん!この前はありがとうねー!」
B組の男子達がユリに気づき声をかける。
「こんにちはー♪ううん!あ、衣装よく似合ってるし凄いね。大道具も立派にできてるじゃん。」
「いやーユリちゃんのおかげだってみんな感謝してますよ。」
「えーそんなことないよー」
すっかり顔馴染みなのか親しそうに楽しく会話が盛り上がるユリと男子に莉穂は、あからさまに冷たい視線を送っていた。

(あ・・・怒ってる・・)
最近女を怒らすと怖いことに気づいた結城は苦笑いを浮かべた。

「これ模擬店のチケお礼にあげるよ。湊と行ってきなよ」
「えー♡ほんとー!?ありがとう嬉しい!」
「俺らベストカップルも湊とユリちゃんに投票しておきました!!」
「えーなんか恥ずかしいじゃーんもし選ばれたらー」


「へぇ。未茉にはなんの決着もつけずに、外堀を埋めるってことね。」

「いやいや・・これにはマジもー色々面倒な理由が・・」
「違うよ東条さん。周りが勝手にそう仕立てあげてるだけだよ。」
莉穂にきっぱりと三上が否定したが、静かな怒りを秘め納得いかない様子だ。