「相変わらずいいディフェンスだな!!」

「ありがとう。」

ニコッと心から嬉しそうに早乙女は笑い、未茉の笑顔を見ながら弾ませていた息を整え、

「早く休んだ方がいいんじゃない?スターターは明日が勝負だからみっちりしごかれるよ。」

「ああ、慣れてるよそんなの」
ははっと笑って返し、周りを見渡した。
「凄いな。居残り組の練習とは思えない程の激しい当たりだな。」
自分を選んでほしい、そんな熱い気持ちが体育館から滲んでくるようで未茉の闘志にも火がつく。


「みんなスターターに選ばれたいからね。僕もだけど。」

激しい競争の中で誰よりも芯の通った真っ直ぐな目に自分を信じる姿勢は尊敬しか浮かんでこなかった。

「こんだけ強豪校にトップ選手が集まればスターターは必ず持って生まれた才能に溢れた人ばかりだ。星河兄弟や、マイクさん。悔しいけど湊とか。」
「……」
「凡人がどうやってもその人達に勝てないならば、肩を並べるには努力しかないんだ。」


「そんなことねぇよ。少なくとも健兄はどんな才能持って生まれてもこの何百倍は努力は惜しまず練習してきたぜ。」

「…え」
「才能って言葉で片付けられたら悲しいだろ。」

はっと吸い込まれるような眼差しで否定した未茉の表情に一瞬、早乙女は好きな子の前で自分の浅はかな考えに恥ずかしくなるも、

「まっ、翔真はわかんねーけどなっ!!あっははは!」
そう笑いながらドリブルを始めだし、コートへと駆けていった。


「なんで…湊じゃなくて、星河健さんのことをあんなにむきになって否定したんだろ…」

遠くなる彼女の姿を見つめながら、早乙女は何かがひっかかっていた。