「わはははっ!!バルーンっ!!いえーいっ!!!」
疾走中の多目的ホールの最終飾り付けで未茉達、実行委員は機械で風船を次々に膨らましてると、
「白石っ!!遊んでねーでやれよっ!!」
「うっせー!!」
結城の近くにあるバルーンでふざけあってちっとも進まない暴れる二人を放っておき、
「翔真、昨日前園さんとの先約だったの?」
着々と作業を進める三上は、気になっていたのか尋ねた。
「うん。」
「北が白石しょげてたって言ってたぜ?」
「え、本当?」
「うん。」
「…」
何かを考えたように黙る翔真に触れてはまずかったかと話をそらそうとしたが、
「未茉ちゃんに変な誤解させたくないし、招きたくもなくてユリにもう家に来たり学校に来たり、必要以上に会うのもなしにしてくれって話したんだ。」
「え…?!」
三上が驚いたのはその話を切り出したことではなく、優しさや思いやりの塊である翔真がはっきりとした拒絶を人に伝えたことだった。
「どんなに想ってくれても絶対に気持ち変わらないって。例え未茉ちゃんが俺じゃない他の人と付き合っても好きになっても。」
「……」
他人を追い詰めることなどしない彼がそこまで自身も追い詰めていたのかと友人である三上には驚きしかなかった。
(仮にそれが結城ならば、‘もうお前とは別れたんだよ!近づいてくんじゃねー!!’とか言ってキレて終わりだろうけど、翔真の場合は、言葉を選んで選んでなんとか傷つけないように慎重に話を進めたんだろうな…)
と思うと彼の苦労を心の中でそっと労った。