「未茉ちゃん、こっちおいで。」
バスに乗り込むと一番後ろの広い座席を陣取り翔真は未茉を手招きする。

が、

「話したいことあるんだ。久々だから一緒に座ろうよ。お菓子もあるよ。」
と誠実さアピールの早乙女が誘えば、
「えっ、お菓子♡!?」
すぐに釣られるも、

「おー、おもしれぇそれ。」
と健が笑いながら悪ふざけにのり未茉の腕を引っ張り、翔真と早乙女に見せつけるように肩に手を回し、
「俺の隣に決まってるだろ?お前誰にスタバ買ってもらったんだ?」

「う・・・健兄様。」

「ムッ」とする翔真に、「ウッ」と躊躇う早乙女に、
「Do be quiet!!いい加減にしろっ!!お前らっ!!馬鹿か!!」
車内にはマイクの怒鳴り声が響いた。


「白石(なんか)の隣の席を取り合ってんじゃねー!!お前ら東京を代表するエースだろっ!!?これから試合だぞ!?みっともなさすぎるぞ!!」
全国へと熱意を燃やすマイクが怒鳴ると、すぐさま三人は適当に座り、

「白石は静香の隣だ!」

「え~お菓子ぃ~……」
マイクに勝手に決められ、静香の隣に押し込められた。

「うちのお菓子はあげへんで!」
「ケチぃ!!せっかく静香に軽井沢のお土産持ってきたのにぃ!!」
「お、なんや未茉にしては気ぃきくやないかっ!」
「静香喜ぶぜっ!!」
そう言いながら未茉は自分のリュックをガサゴソ漁った。


「気苦労が絶えなそうな予選合宿になりそうね。」
「本当だぜ。」
バスの席順一つでどっと疲れるマイクは田島の隣に腰かけると、

「あ、自分はちゃっかり元カノの隣に座っちゃうんだ?東京を代表するエースさん。」
へぇーっと意地悪な笑みを浮かべる健の仕返しにマイクはまたとてつもないストレスを抱えるのであった・・・。