「ごめんね。今少し平気?」
「おう。」
その男は多分違うクラスの奴でうっすら見たことあるな、くらいの未茉の記憶であったが軽く頷く。

彼らは真っ直ぐ見てくる翔真の方をちらりと見ながら未茉を違う場所へと誘導した。


「邪魔しなくていいのかよ?翔真」

いつもなら向かっていくのに立ち上がりもしない様子を結城は不思議に思った。

「いや例え彼氏であっても止める権利もないし、人の告白って誰でも邪魔されたら嫌でしょ。」
代わりに三上が淡々と正論を述べるも、翔真はただ一点をぼんやり見ていた。

もうすぐお前と付き合うから安心しろよ!って言ってやりたくて疼くも…、明らかに何かが違っているようなその雰囲気に二人はうっすらと嫌な予感がした。



「で、話って?」

ホームルーム前の人もまばらな下駄箱前まで連れてこられ、未茉は話を切り出した。

「…なんとなく分かるっしょ?」
男三人のうち、一人が照れくさそうに口を開いた。
このシチュエーションは何回、いや何十回も経験のある未茉は、さすがにそこに鈍さはなく、

「これって告白か?」

「うん…そう。」
「だったらわりぃけど」
「でも湊にフラレてるじゃん?」

「あ!?」
思いがけない言葉が飛んできて思わず聞き返すが、
「なんかそのワードよく聞くなぁ。」
「えっ!?違うの?」
驚いたように嬉しそうに聞き返してくる男子は、更に話をつめていった。

「…白石さん鈍いよね…?」

少し薄笑いを浮かべ恐る恐る反応を伺うように彼らは尋ねてくる。

「あーまぁ、親友達にたまに言われっかな!たまぁーになっ!なんで?」
認めたくないのでたまにを強調するも、

「目を覚ました方がいいよ。湊なら他校の前園ユリって子と付き合ってるんだよ?」

「はぁっ?!んなわけ」
「白石さんに言いずらいからああやって校内に女連れ込んで態度で示してるんだぜ?」

「翔真からそんなこと聞いてねーし、翔真はあたしのことすげー好きだけど。」


「男の気持ちなんて、案外簡単に変わるよ?」