「おー!あたしもっ!!」

当の本人は赤面するでもなく、パン片手に翔真の肩を叩きながらニカッと笑って答えると、
「翔真、よかったな!白石が健さんに…」
結城がいいかけると、もがっ!!と後ろからその口を手のひらで三上が塞ぐ。

「なにす…」(小声)
「まだ言うのが早い!あの気分屋の白石のことだ!翔真をその気にさせてコロコロまた変えるかもしれないだろ・・これ以上白石の一字一句に振り回される翔真の身にもなってみろよ。」(小声)
「確かに・・・」
もっともなことをいう三上に結城も小声で頷きながらそっと微妙な関係の二人のやりとりに振り返る。

「静香ちゃんちどうだった?」
「楽しかったよ!おばさんにもおじさんにも久々に会えて!てんこ盛りご飯ごちそうになった!!静香は母ちゃんにそっくりなんだぜ!」
「なんとなく想像つくなぁ。」
「ははっ!だろ!?」

目の前にはいつものように机に後ろ向きにがに股で座って、はしゃぎ笑い話す彼女の姿をどこか遠く感じるのは、
“翔真、わりぃ…”あの一言だった。


「なんだよ。元気ねぇーな!」

自分を見ているのにどこかぼんやりしている翔真の切なさを隠せない瞳に未茉も気づき覗きこむ。

「もしかして病気か!?」
「大丈…」

「元気ねーなら、元気やろーか?」

翔真に明るく元気に笑いかけると、少し驚いたように目を開くも、自分の手を彼女の細い手に伸ばし、

「うん。ちょうだい。」

おねだりするような甘えた目を閉じながら自分の頬にその手をあてる。

互いに照れることもなく、それがまるで当たり前かのように、触れあうことが必要な習慣のような二人に、周囲が目を見張る中…

「あ、白石さぁーん!」

教室の入り口からクラスメイトの女子に呼ばれ振り返り、
「おー!どうしたのー?」
するりと翔真の手から離れて入り口へと向かうと、廊下で数人の男子に囲まれた彼女を見た。

「彼らが話があるって。」
呼ぶように頼まれたクラスの女子が未茉にそう言った。