「あ、やべ充電切れてんな。」

昨夜あのまま静香の家に泊まった未茉は、翌朝歯磨きをしながらスマホを見ると画面真っ暗だった。一回着替えるために家に帰ると、

「あらぁー未茉ちゃん!!おはよー!昨日湊君おうちに来たわよぉ。」

玄関でローファーに履き替える未茉に心配そうにママが駆け寄った。

「そーなの?そーいや、昨日チラッと会ったのに話せなかったなぁー。」
すっかり翔真の存在を忘れていた未茉であった。

「んっもー!一体何してたのよ!翔真君心配してわざわざ来てくれたのよぉ!?もぉー未茉ちゃんってばそんなんじゃ翔真君に愛想つかされちゃうじゃなぁい!!」

「朝からぎゃあぎゃあうっせーなぁ・・・。」
「もー!!未茉ちゃんってば呑気すぎ!!せっかくあんなイケメンが思ってくれてるのにぃー!!気が変わったらどうすんの!せっかくのお婿さん候補がぁー!」

「あははっ!そうしたら他探すか!!」
笑いながら全く母の話を相手にしない娘に
「あんなイケメンで一途でずっと思ってくれる健君を蹴ってまで湊君を選ぶなんて心が痛すぎるぅーー!」
「なんでママがいてぇーんだよ・・・」
自分が恋する乙女のように困った顔で体をくねらせ、ブツブツ言うママをほっといて、

「じゃ行ってきまぁーす!!」
「あーんっ!!もうっ未茉ちゃんってば!!ちゃんと湊君に謝るのよぉー!!心配かけてごめんねーって!!言うのよぉーー!!」

通りすがる人目も憚らず玄関先から未茉が遠くなるまで大きな声で言うママに、

「ママが言えよ・・・」

面倒くさそうに呟く娘なのであった。