「懐かしいわね。思い出しちゃって…あれ?今日練習早かったの?」
寝てしまってたから分からなかったが、時計を見上げると帰宅時間がいつもより早い帰りに気づいた。
「うん。」
水を冷蔵庫に戻して部屋に戻っていくその後ろ姿に、いつもと明らかに違う様子を感じていた。
「ちょっと、しょーー」
それは思わず呼び止めようとするくらい大きな体の頭から足先全てまで全身から伝わるものだったが、
パタン…
振り返れないくらい悲しいことがあったのだと。母は悟り、部屋の扉の閉まる響く音を聞いた。
「15年か…」
ベッドに横たわり、健が言った言葉の重みをかきけすくらいに強く瞼を閉じ、
“翔真…わりぃ。”
あれは、彼女の脳内から消えたと思った。
「勝てねぇのは…俺だ。」



