「じゃー今日はハンバーグにしよっか?」
「わぁーいっ!本当?!ありがとう!」
母に頭を撫でられ目をくしゃっとして、無邪気に喜ぶ翔真の足元へころころとバスケットボールが転がってきた。
「ん?」
並木道の通りに転がってきたボールを拾って公園に目をやると、
「おーいっ!こっちこっちー!!!」
太陽の日差しの眩しい逆光に目を細めると同じくらいの幼児が手を振ってボールを待っていたので、
「返してくるね!」
翔真は小さな手でボールを手にした。
(大きくて変わったデザイン。しかも重い。)
滑らかな曲線の入った表面がざらつく手触りの球体は初めての感触だった。
小さな手にずっしり重さが響くそのバスケットボールを翔真は生まれて初めて手にした。
「おせぇーじゃねーか!!早く持ってこいよ!!」
「!!」
せっかく持ってきたのに、仁王立ちになって大声でキレながら出迎えられる翔真はたじろいだ。
「あ?」
思わずびっくりして何も言えずにいる翔真に顔を近づけその子は睨んできた。
目がぱっちり睫毛がくるんとした可愛い顔だったが顔や体中には、絆創膏が貼られて傷だらけでだいぶおてんばな子のようだ。
ダムダム…
「!」
自分より小柄なのにその子の小さな手に吸い付くように開いた足の中、腰回りを鮮やかな手さばきでくぐらせドリブルをし、
ピタッと脚を内股にし、遠くのゴールを見上げ軽く手をスナップをかけて宙にボールが放たれると、ミニバス用の公園ゴールのネットに落ちていく。
スパッ…!
「!!」
あまりにも綺麗に音もなく吸い込まれていったボールはまるで魔法がかかったみたいだった。
こんな小さな子があんな大きなボールをあんなに高いに位置まで投げるだけでも凄いのだろうに…翔真は初めて知った驚きに胸の奥が高鳴った。
「すっ…すげぇー…!!すげぇーシュート!!!」
「!」
(翔真…!)
目をキラキラと輝かせ身を乗り出して興奮気味に顔を赤らめてその子に近づく息子の姿に母は驚いていた。
あまり自分から他人に興味を示したり興奮したりすることがない息子の世界が豹変したような感激ぶりに驚いたのだ。



