「まぁー!あれぇー。なんか和やかな雰囲気になっちゃったわねー。ここで未茉ちゃんを取り合っちゃうとかないのかしらぁー。もー!」
覗き見ママはじれったそうに病室内を見つめていると
「わっ!」
突然勢いよく扉が開き、後ろから和希が車椅子を動かしながら病室の中へ入り、


「健兄っ!!!どうしたんだよ!!?らしくねーじゃん!!!」

出ていこうとする健を制止するかのように車椅子で入り込み止める。


「ん?!和希いたのか?!」

そのやり取りに未茉は振り返り翔真も見つめる。


「らしくねーじゃん!可能性云々じゃなくていつもどんな時も諦めねーのが健兄だろ!?」
声を張り上げて怒鳴る和希に未茉だけではなく、健も驚いた。

「怪我だろ?!思うように治らなくて動けなくて湊と張り合えないからかよ!?そんな理由で…」

「違うぜ。」
弟の優しさにフッと笑いながら和希の頭をぽんぽんっと撫で、

「これでももう十五年想ってきたんだぜ?」

「「…!」」

「そろそろ引かねーと引き時を見うしなっちまうしな。」
いいきっかけだと。一瞬見せたその寂しそうに落とした視線の深さに聞いていた誰もが言葉を失った。

「健兄ぃ…俺の方が泣けるじゃねーかよ…」

その目を見たら何も言えなくなってしまった和希も頭から感じる温もりと重みに視線を落として目尻を潤ました。