顔をそむけてもそむけても、逃れれられない力強さでまとわりつくような唇に
「ッ!!はっ…ヤッ…!!」
熱っぽくて、唾液さえもこぼれるような舌の絡ませ方に頭の芯がクラクラになり力が抜けた時、

バサッ…
体と壁に挟んでいた湿布の箱が落ちて、健はスッと唇を離し拾った。

「やっぱり和希の湿布盗んで…」
「こっ…これは…るっルリちゃんのお首に貼ろうかと…!!」
「ばぁあーかっ!!!」
分かっていたが手にした湿布の箱を屈んで拾ってため息つくと、未茉はルリちゃん人形に自分の顔を隠しながら


「健兄とはもうキスできねーよっ!!!」

「は?」
突然大声出して真っ赤な顔の未茉に自分の言葉の返しとは違う返しがきた健は眉にしわを寄せ、
「いや、今俺が言ってんのは…」

「ごめん…。すげー思ってくれて嬉しーけど、もうキスできねー…」
涙をポロポロながしながらルリちゃん人形に顔を埋めながら首を振った。

「湊と付き合うからだろ?分かってるよ。」
「違ーよっ!!」
「…」
「健兄の想いに自分の想いが追いつかねぇーからだよ!!!」

自分が思っていたよりも、ずっとずっと計り知れない思いの深さにようやく気づいたのだ。

そんな嘆き俯く辛そうな彼女の泣き顔に健も気づくが、
「…うわー。傷つくことサラッと言いやがったな。」

「マジわりーけど、もうキスとかできねー…」
「分かった。分かった。とりあえずお前…」
そう言いかけると、
「うっあぁあぁああぁああああああーーーんっ」
力抜けたように床に膝まづき、未茉は咳をきったように個室ブースから駄々漏れの大声で泣き喚いた。

「分かった分かった。ここ病院だから。な?」
頭を撫でながら自分の胸へと抱き寄せると、バタバタッと看護師達の足音が響いてきて、

「どうしました!!?」

院内に響く鼓膜を突き破るような泣き声に慌てて一斉にブースへと入り込んできた。

「あ、ちょうどいいとこに。左肩が痛くて泣き叫んでるから見てやってくれます?」

健は立ち上がりひょいっと未茉を抱き抱えながら言うと、
「へっ!?」
ピタッ・・・と未茉は泣くのをやめて固まり、
「なっなになになにぃーーー!!?」
問答無用で健に診察室へと連れてかれる。
「嫌だぁぁぁあぁぁあああーー離してぇぇぇえええっ!!!」

また違う叫び声か病院中を響き渡らせた。