「健君と匠君のお母様が亡くなって二人の母代わりとして育ててきたつもりだけど、娘息子六人の中で一番我慢強いのは健君。」
「だろーよ。」
納得しながら頷く未茉をよそに、
「そして一番弱いのも、健君よ。」
「!」
意外なママの言葉に足を止め目を丸くして驚いてると、
「まっさかぁ~。一番強ぇーだろ。健兄はっ!頭に針18本刺しても怖がらねー奴なんだからよっ!!」
ははっと笑いながら否定してると、
「針18本って…ああ、子供の頃の岩から落ちた時の?」
「そーだよ!!嵐とあたしガン泣きだったのに健兄だけへっちゃらだったじゃんっ!!!」
「泣いてたわよ。」
「え?」
「健君。泣いてたわよ。」
「うっそだぁー!!」
「…未茉じゃなくてよかったって泣いてたわよ。」
「……!」
「怪我して運ばれた病院で未茉ちゃんと嵐君が泣き叫びながら運ばれて、看護師さんは涙一つ流さない健君の怪我見て驚いていたわ。」
“あらやだ!!この子が一番の大ケガじゃない!!よくまぁ泣かないで…偉いわ…!!”
“俺なら大丈夫だから未茉と嵐を早く治してやってよ!!”
「頭血塗れになりながら必死に言うもんだから可愛くて可愛くてね~」
懐かしそうに思い出すママに未茉はひきつると、
「縫合するときも痛みに肩を震わして誰にも見られないように健君が私の手を握りながら涙流してね、」
“未茉じゃなくてよかった…いてぇから…”
「真っ赤な顔して痛みに耐えながら泣く健君は今でも可愛くて忘れられないわぁ~♡♡ふふ」
母にとっては可愛らしく懐かしさに浸る思い出でも、娘にとってはなんとも胸に突き刺すような痛みが走ると共に、
“健がお前を思う愛には俺らも太刀打ちできないよ。”
匠の言葉がよみがえっていた。



