しばらくして濡れた髪が次第に一本一本サラサラにほどけるように自分の指を通り抜けてくと、
「未茉ちゃんの髪、細くて柔い。」
「そーか?気にしたことねぇーや。」
相変わらずのざっくりとした返しにも関わらず、

「髪、伸びたね。」

四月には肩にかかるくらいの髪が今は背中まで伸びている。
「だって翔真が伸ばせって言ったじゃん。」
「俺の為に伸ばしてくれてんの?」
「シュシュ貰ったしな!あたしは律儀な女だぜ?」
「律儀・・・」
ドライヤーを止めて乾かし終えた髪を撫でて、体を起こさせるように腕で引っ張ると、

「ん?」

ちょうど視線と口元の高さにある頭に後ろからキスしながらぎゅっと抱き抱え、

「いい匂い。」

翔真の身体に沿うように密着する自分の身体と後ろから伸ばされた腕と頭の上から感じる優しく響く声と吐息にドキンッ……と胸がまた高鳴った。

「ちょっと離せ……」
「やだ。」
翔真の力強い‘やだ’は絶対に離してくれないやつだと知っている。

「後ろからいきなり抱きつかれんの苦手なんだよ。」
「あ……そういえば前もそうだったよね。真っ赤になってた。」

未茉の家のキッチンで翔真が後ろから抱きついた時、いても立ってもいられない妙な気持ちになったことを覚えていた。


「意地悪していい?」

「え?」
「このまま」
そう言ってーーぎゅっと抱き抱えたまま、未茉の髪を後ろへと流し耳にそっとキスをする。

「ちょっ……」
未茉の両手は前で翔真の左手でガッチリと手錠のように捕まれていて、身動きができない。