「ね…寝違えちまっていてぇーんだ。左肩」

「……ふーん。」
15年も一緒にいる仲だ。未茉の不自然な嘘など健の目にかかりゃ一瞬で見ぬけられたが、

「そのぬいぐるみもだいぶ寝違えちまってるな・・」
「ああっ!!そうだった・・早くどうにかしねぇと・・・」
思わず未茉が持っていたルリちゃん人形に目が行ってしまう・・

「しかし、こんななんかある度に俺呼んでたら、湊もたまんねーだろーな。」
「アイツの話はいーよ!あんな分からず屋のおこりんぼは知らん!!」

「何、喧嘩かよ。」
「…」
「まさかそれ、俺が原因とかじゃねーだろーな・・・。」

「恐ろしいくれぇに勘いーなぁ・・・。そーだよ。その通り。」
「ははっ。マジ?俺にとっちゃいい展開なわけだ?」

「・・・。」
嬉しいんだが面白がってんだかイマイチ分からない未茉だったが、
(匠兄はああ言ったけど本人もそう言ってるし、言ってもいいんじゃねーか?元はと言えばそれが原因で翔真と喧嘩になったんだし。)

「あのさー、健…」
そう言いかけた時、プップー♪と車のクラクションが鳴り響いた。

「あらぁ~~♡やだぁっ!二人こうして見るとお似合いだわぁ~」

「「!」」
背後から聞きなれた高らかに弾んだ声に二人が振り向くと、
「ママ!!!」
和希の病院へ向かっていた車から未茉達を見つけて運転席の窓を開けて呼び止めた。