「なんだよ・・・あの野郎」
「なんやなんや?」
急に静かになった未茉がぶつぶつと何かを言い始めたと思ったらむくっと起き上がり、

「ぬぁぁぁああああ!!!翔真のばかたれがぁぁぁあ!!!!」

屋上の手すりに手をかけ空へ向かって大声で叫ぶと、
「「!!」」
あまりの声に静香はひっくり返り、
「アホか!!なんちゅー声を出してんねん!!!鼓膜が破れるやないか!!」


「み…!!未茉さん!!?」


休み時間で仲間達と校庭に出てきたオギタクがこっちを見て手を大きく振っている。

「あ!!オギタクだぁぁあ!!やっほぉぉーーい!!」
「なんやてぇ!?校舎全然ちゃうのに」
静香も隣で身をのりだし、その姿を確認する。

「ルリちゃんが近くにいるって気配を察知して探してたら、未茉さんが来てくれるなんてぇ!!」

「おう!!持ってきてやったぜ!!」
「今から取りに行きます!!」

「なんや案外ええ男やん・・・天才サッカー少年いうからチャラチャラしたイメージしかあらへんかったけど」
早速胸をときめかした静香は、

「うちが渡す!!!」
「あ?」
オギタクと話したいのか静香は未茉の持っていたルリちゃん人形を引っ張ると、

「やめろ!!引っ張るなよ!!」
「あんたがようやく恋のキューピッドになってくれる日が来るとわな!!えらい気がきくやないか。」
「あ・・・?」
「ええよええよ。これでうちの夏の胸の痛みはチャラにしてやるで!!」
「はぁ?!」

「あんたにしてはわりとええ男用意したで。サッカーはあんま興味あらへんけど、あんぐらいの男ならまぁまぁうちに釣り合うしな。話すきっかけさえあればすぐに…」


ビッ・・・←何かが破ける音。



「「え・・・・・。」」


二人の手元のルリちゃん人形の首がもげていた。