「翔真!!!」

追いかけるように机から飛び降り呼び止めると、ゆっくり振り向いた。
「分かってるよ!!あたしが自分勝手だって!!でもなんともない顔してっかもしれねーけど、健兄本当はすげー痛がってて不安なんだよ!!」

「……ん。分かってるよ。」

ただならぬ雰囲気のやりとりの二人にさっきまで賑やかだった朝の教室が一気に静まり返り、
「「何……どうしたの?」」
「「また喧嘩かよあの二人」」
ざわざわとクラス中の視線を集めてる。


「……分かってるけど、何も状況は変わってないよね?」

「は?」
「この前も怪我もしてたし、リハビリ頑張ってる中でも、健さんに謝ってでも許してもらうって付き合うって言いに行くっていうこと決めたんじゃないの?」

「決めたよ!?」
「じゃなんで同じ状況で時間が経つと先伸ばしになるの?」

「だから!健兄の状態があれより悪化してんだっつーのっ!!別に好き合ってんだから付き合うのなんかいつでもできんだろ!?わっかんねー奴だな。」

「わからないよ。」

睨みきる未茉に対して翔真は大きなため息つきながらそう言った。
「あ?」

「考えてみて。この数ヵ月ずっとこの繰り返しだよ?」
「……!それは……」

言葉をつまらすと翔真はバッグを持ちかえドアへと歩きだした。


「翔真にはわかんねーんだよ!!!うちらがどんなにストイックにバスケやってきたかっ!!!バスケ命かっ!!!」

「……」
「自分のほぼ人生であるバスケができねー痛みとかわかんねーだろ!?四六時中、寝てる時間よりもドリブルしてる時間の方がなげーのにそれが出来なくなった時の絶望感とか」

「……」

「お前みてぇに神の子だのBIG3だのってほだされて朝練もこねーお気楽にバスケやってる奴とうちらはちげぇーんだよ!!!」

「ーー白石!!!」
つい勢いで強く言いすぎたその時、なぜか大声で未茉の名前を呼んだのはキタローであった。

「え…何キタロー」
驚いて振り返ると、キタローは首を振り彼女の肩を優しく叩きながら、

「それは違う湊は……」
険しい顔で遮るように何かを言いかけるも、


「分かってあげられなくてごめんね。」

いつもと同じ優しい声なのに、遠く感じさせた翔真はそのまま教室を出ていった。