「言うつもりでいたけど、国体終わって怪我完治するまで言えねーかな。考えてみりゃ付き合うのなんて焦んなくていいし。」

「「……!!おい白石!!」」
あまりにもさっくりと重要なことを先伸ばしにし、本人の前でサクッと言ってしまう未茉に結城と三上も翔真を横目に言葉をつまらす。

「……」
翔真の脳裏にはたった数日前、駅のホームで自分に

‘健兄には懺悔して許してもらうからっ’
‘言ったらちゃんとキスしてくれる!?’
必死になってあんな風に言ってくれて嬉しくて期待してくれたことを呆然と思い出した。



「この温度差……」


ガクッ……と重い頭を抱えるように机に肘をつき翔真は小さな声で呆れたような嘆いたような声で呟いた。

それは明らかに悲しみを秘めた声でーー。


「し…翔真……」
どんな時もどんな事態でも顔にも態度にも出さない翔真があからさまにショックをうけた姿に親友の二人は驚き言葉を失う。

「……焦ってはないよ焦ってない。でも」
そう言い聞かすのか落ち着かすのか自分でも分からなかった。
やっと前に進んだと思っても、この手から離れるとまた変わる。

彼女の言い分は分かる。分かるけれども、また振り出しに戻る。
翔真はなんとか理解しようとは今回ばかりは、何かを口にしても駄目な気がして、

「……うん。分かった。悪い、俺次サボる。」

優しくいつもと変わらない声と笑顔だけど、ガタッと席を立つ不自然なタイミングと言葉は、

それが翔真の‘怒り’だってことはいくら鈍い未茉にだって分かった。