「やっぱり未茉も来てたんだな。」

リハビリを終えやってきた健と合流した。
「騒がしい女が来てるって看護師さんが言ってたから多分お前のことだと思ったぜ。」

「あのババア看護師だな・・。」
「お前。思ったこと口にしすぎだぞ。」
「おいおい・・・二人とも毒舌すぎるぞ・・。」
二人らしい会話のやりとりに匠は苦笑いをしている。

汗を拭いながらバッグを背負い、病院の外に出て涼しい顔していつものなんら変わりのない健を見上げ、

(なんてことない顔してるな。元々めちゃくちゃ我慢強いからな。あたしがピーピー泣くことでも平然とした顔してたしな。昔っから。)

「そうだ…軽井沢の嵐んちの別荘に遊びに行って洞窟で秘密基地作ってたら岩が崩れてきて結構な高さからみんなで転がり落ちたよな。嵐とあたしは大泣きしてよー。」
※昔から親に怒られるような悪いことは基本しない匠は別荘で留守番をしていた。

「なんだよ急に・・・」
我慢強いで思い出した未茉が突然懐かしむように昔話を始めるので健は驚くも、

「ああ、病院で二針縫ってお前ら大暴れしたもんな!
‘あたしの顔は布じゃねぇーんだよ!!針刺したら死ぬだろうっ!!!’ってな。」
クックックと今でも相当笑えるのか健は体を揺らして笑い出す。

「あん時、健兄はうちらを守って下敷きになって10針塗ったのに涙一つ流さなかったよな…」
幼いながらに今でもあの時の痛みがうっすらと未茉はよみがえるくらいだった。

「いや、18針だよ。」

「「18!!?」」
「今でも頭の後ろ縫ったとこうっすら剥げてるもんな。」
「あはははっ!!」
無邪気に未茉が思い出し笑いしてるのを健は横目で見下ろしながら…

「もしかして、そんなこと思い出して泣いてたのか?」
「あ?」

「泣いたんじゃねぇーの?瞼、腫れてるぜ。」

そんなこと些細なことをさらっと気づくのは健だけだった。

昔から。

ぽんっと頭に手を置き、ぐしゃっ…と後ろから撫でられた時、
自分は健兄が辛くて泣いてることを何度気づかず平然と見過ごして生きてきたんだろうと未茉は唇を噛み締めた。