「禅っ…!!!」

病院の最上階に禅の家族の部屋があると聞いていた未茉は、エレベーターで降りるとセキュリティー室へと辿り着いて呼び出した。

「え…、先輩!?」
ホテルのようなフロアーの中の扉から禅が一人出てきた。

「よかった…ここにいて」
「いや、本当にたまたまですよ。和希の見舞いの後、ちょっと親父に用があったから。自宅のマンションにこれから帰るとこで。」
こんなところに尋ねてくるなんて驚いていると、

「何かあったんですか?」
「健兄の…!」

「え?」
そう無我夢中で言いかける未茉は禅を睨むように見上げ、胸元を掴んで
 
…ダンッ…!!と壁に禅を押しのけて勢いよく唇を奪った。


「!!」
あまりにも唐突で目を見開いて驚く禅だったが…


「お願い…!キスでもセックスでも何でもお前の望むスケベなんでもすっから、健兄を今すぐ治してっておじさんに伝えてくれよ!!禅…!!!」

「先…」
ーーバンッ!!壁に拳を思いっきり打ち付けて真っ赤に充血した目で見上げ訴えた未茉は、禅に何度も強引にキスをし、

「病名…教えてくれよ…頼む。」
「…俺は知らないんです。」
「おじさんに聞いてくれよ…頼む。」
「聞いても、守秘義務があるので教えてくれないです。」
「頼むから…」
すがるように泣きつく未茉をゆっくりと離して、支えるように肩を抱きよせ、


「先輩、キスしてもセックスしても教えられないけど、うちの親父だって健さんも和希も全力で治したいと強く思ってますよ。」


「…うっ……」
チームメイトと先輩の怪我に、禅ももどかしさを苛立つように真剣な眼差しで答えたのが、ひしひしと伝わってきて、

…ぽろっと涙が一筋頬を伝うと、

「うっ…あぁあああーんっっ」
せきをきったように泣き出す未茉の背中を禅は、彼女が落ち着くまで静かにさすっていた。