「元カノほっとけないって?」

「!」
中廊下に戻ってくると全て見ていたのか、風呂上がりの健が翔真を待ち構えていた。

「あれ覗きですか?」
「いや、どちらかというと監視?」
「監視?」

「お前が元カノといちゃついてるぜ。って未茉に密告できるからな。」
人を試すようにニヤッと笑う健に
「うわっ、性格悪さが際立ちますね。」
「おう。元全国高校ナンバーワンバスケプレーヤーなんてこんなもんだぜ?」

「あはははっ。」
やましさなど微塵も感じない翔真の笑顔に健はため息ついた後に、
「あーいう優しさは残酷だぜ?」

「ありがとうございます。」
「あ?」
「それって未茉ちゃんのことを思って言ってくれてるんですよね。」
「あ?」
「俺が未茉ちゃんを傷つけないように。」

「へぇ。何お前、ずいぶん自信あんだなー未茉が自分のために泣くって?」

「泣かせないですよ。ていうより俺の為にはたして泣いてくれるかどうか……」
自分のためにそんな弱気になってくれる彼女は想像がつかず腕を組み、考えてしまうのんびりとした翔真に

「ははっ!報われてねー!!」
「どちらかと言うと健さんに俺泣かされてますけど。」
「だろーな。だって俺、お前に負けてねー自信あるから。」

「あの健さん・・さらって言いましたけど、それ宣戦布告ですか?」
「とっくだろ。」
「受けて立つ時がきたかー」
「逆だろ。」
はぐらかすように軽く笑う翔真は、チラッと健の左腕を見た。