「綺麗事で彼女の気持ち優先させてるふりして本当は健さんに勝つ自信がないんだよね?それが白石さんにも伝わってるんじゃないかな?」
「え」
「だから僕、諦めないよ。」
どんなに時間がかかってもまだ自分の入る隙があると悟った早乙女は、
ーーガタンッ……
電車がホームに到着しさっさと乗り込んでいく。続いて翔真を横目で見ながらもマイクは車両に乗り込む。
「……」
静香の言葉と早乙女の言葉が頭の中を駆け巡った翔真は電車には乗らずに未茉達のいる逆側のホームに向かった。
(余裕なんかじゃない…嫌われたくなくて、好きすぎてずっといい顔していた。
ーー健さんを想う気持ちも大切にしなきゃ。
そんなこと本当は思ってない。)
いつか自分で放った彼女への言葉に後悔しながら、
“彼女の気持ち優先させてるふりして本当は健さんに勝つ自信がないんだよね?それが白石さんにも伝わってるんじゃないかな?”
“あたし翔真とこんな話したいわけじゃないんだよ”
ーーダダッ……
長い足で一気に階段を飛ばし悩んでいた思いと、彼女の泣き顔を振り切るように駆け降りて彼女の元へ向かった。
(健さんよりも早乙女よりも桐生よりも好きなのに、誰にも渡したくないのになんでーー)
「はぁ……」
馬鹿みたいに遠慮してた自分に苛立った。
隣のホームに電車が到着して流れる音楽が響き、翔真は未茉達が乗っているだろう車両へと駆け出すも、
バタッ……
目の前で扉は閉まり発車してしまった。
「あ…」
車両は通りすぎ、遠く小さく過ぎ去って行ってしまってしまった。
頭をクシャッ……と掴み瞼をきつく閉じるも、すぐさまスマホを取りだし未茉に電話をした時、
呼び出し音と一緒になぜか近くで着信音が聞こえ、俯いてた顔をあげた。



