「ユリ!!」
体育館を飛び出してくとバス停で待つ彼女の姿を見つけ手を引っ張ると、

「何よ…」
「なんで帰んだよ!!」
「……ほっといてよ。」
掴まれた未茉の手を振り払いそっぽを向く。

「バスケやろーぜ。」
「……」
誘いにも彼女の背は向けられたままだった。
「お前このまま辞めたら後悔す…」
そう言いかけた時、

「白石は私の欲しいものなに食わぬ顔で持ってちゃうじゃない。」

「は?」
言われたことの意味が全く分からないと目を丸くする彼女の顔がユリにとっては白々しく見えて苛立った。

先生からの期待も、翔真も。
自分以上の愛を感じて持ってってしまう。
それが何よりも耐え難い苦痛だった。

「…そんなに私にコートに帰ってきて欲しい?だったら、交換条件。」
薄ら笑いを浮かべたユリはそう面白そうに尋ねてきて、

「翔真をくれない?」

「あ?」
「翔真が白石の周りにいればいるほど私はバスケを嫌いになる。」
「……何いってんだお前。翔真とお前自身のバスケがどう関係があるっーんだよ。」

「あるよ。翔真を振ってよ。」

思いもよらないことを要求された未茉は驚きで、言葉を失った。

「翔真がいなくても、健さんがいるじゃない。私には翔真しかいないの。それに今の私には翔真が必要なの。」

情緒不安定なのか急にユリは未茉の腕を掴み、抱いたままだったルリちゃん人形にぽろぽろと涙を溢した。

「翔真を私に譲って。そうしたら頑張るから!!そうしら頑張れるから…」
心の奥から絞り出すような声と、掴まれた手から伝わる想いの深さに未茉はただただ驚いた。