「な…何を弱気になっとんねん!!」
「愛知のゴール下はこんなもんじゃない。だから合宿中に勝つために練習しただろ。千葉相手にこんなに手こずってちゃ愛知なんかぼろ負けするぜ。」

いつになく気迫ある未茉に東京女子は静まり返ると、走り出す。

「どこ行くねん!?」
「ユリんとこ!」
体育館を出ていく未茉を誰も追うものはいなかったが、

「確かにうちにこんなに手こずってちゃ勝てないですね。」

ちょうど挨拶にきた菅原が悔し紛れにそう頷いた。

「なに負け惜しみ言うとんのやっ!!」
その嫌みに静香が牙を向くと、田島がその肩を叩き前に出て菅原に握手の手を出した。

「菅原、お疲れ。まぁまぁいい勝負ありがとう。」

「ふん……!!」
「まぁ、私がいなくなった後、せいぜい来年は白石と関東ナンバーワンの座でも争ったら?」

「関東ですか?冗談。私が目指すのは、全国ナンバーワンプレーヤーですわ。田島さんは残念だけど関東止まりでしょうけど。今のままじゃエマには到底勝てっこないですね。」

思わず握っていた手を田島は振り払ったが、菅原の悔しさの滲み出た表情を見て怒りがふっと消えた。


「インターハイで戦った時、エマ一人の力の凄さ分かったでしょう?」

「……」
この女もまたーーエマに歯が立たなかった女の一人なのだ。
自分と同じような屈辱を味わってるのだろうから。

「忠告です。白石がいてもこのままじゃエマには…愛知には勝てないですよ。」
「いらん忠告だね。まずはうちに勝ってから物言いな。千葉のルーキーさん。」

にこっと嘲笑うかのような笑みと共に更衣室へと向かった。