「お疲れ。なんとか逃げ切ったね。」

試合終了後、選手同士で苦い顔を浮かべながらも手を叩きあった。

「大成がこんなに苦労した相手は久々だったね。」
床へ滴り落ちる汗をタオルで拭いながら石井は改めて手こずった全国ベスト4の千葉を横目で見ながら言った。

「……本当に。」
抜群のオフェンス力を誇る大成が60点台に押さえられた試合はいつぶりだろうか…。
白石がいなかったら負けてたと思うと、勝ったものの田島も全くすっきりはしない試合内容に今後の課題を浮き彫りにした。

「いいか?いくら勝っててもバスケは最後の一秒まで気を抜くな!静香お前は……」
勝ったのにも関わらず神崎監督は、納得いかないプレー内容に選手達一人一人に叱っていく側で、


「なぁ、ユリは?」

ベンチに戻った未茉は辺りを見回しユリの姿を探しながら尋ねた。
 
「さぁ…」
「帰ったんじゃん。」
どうでもよさげに答えるベンチ陣に、
「は!?マジ!?なんで!?なんで帰らせたんだよ!?」
納得いかなそうに怒鳴った。

「未茉!ええ加減にいいこぶりっこすんのもやめときや!!ユリはもう辞めたんやっ!!根性ないんのがスタメンにおるだけで必死の部員に失礼やで!!」

「勝てねーよ。」

「……なんや?」
「ユリがいなかったら愛知には勝てない。」
きっぱりと放った未茉に石井も田島も監督も顔をあげた。